女性と側弯症

Women & Scoliosis

 

ここでは、アメリカの"Scoliosis"というサイトを日本語に訳したものを掲載しています。

症の定義、診断法、治療法、といった基本的な情報から、

他ではあまり取り上げられない、メンタル面、親子(母娘)関係、大人の側症、痛みなどについても触れています。

主に女性の視点から書かれていますが、男性にも十分役立つと思います。

なお、日本の今の状況に合うよう、例えば入院期間など、内容を一部加筆修正してあります。

<内容> 

1.側症とは/What is Scoliosis?

2.診断方法/Diagnosis

3.側症の治療―経過観察、装具、手術/Treatments of Scoliosis

4.側症の子供とその親/Children with Scoliosis and Their Parents

5.成人の側症/Adult Scoliosis

6.側症と痛み/Scoliosis and Pain

   7.側症と自己イメージ―女性としての側症/Scoliosis and Self Image: Scoliosis as a Woman 
 


1.側弯症とは?

What is Scoliosis?

 

 一般に「背骨」とか、「脊柱」と呼ばれているものは、1つの骨ではなく、たくさんの骨がブロックのように積み重なってできています。たくさんの骨からできているおかげで、私たちは背中を前後や左右など、さまざまな方向になめらかに曲げることができます。

 背骨を構成し、ブロックのように積み重なっている1つ1つの骨を、「堆体(ついたい)(vertebra)」と言います。

 「頚椎(けいつい)(cervical vertebra)」とは首の部分で、全部で7つあります。「胸椎(きょうつい)(thoracic vertebra)」はほぼ胸の部分で、12あります。 「腰椎(ようつい)(lumber)」は腰の部分で、5つあります。 「仙骨(せんこつ)(sacrum)」は、一番下の部分です。

 正面から見た時、脊柱はまっすぐです。 もし脊柱が左か右にカーブしていた場合、その状態を弯症」といいます。

 一方、脊柱を横から見ると、、3つの緩やかなカープがあります。 1つは首にあり、緩やかに後ろにカーブしています。その下で、緩やかに今度は前のほうにカーブし、そして、腰の部分で緩やかに後ろにカーブしています。これは、体への負担を軽くするためで、カーブしているのが正常です。 逆に、カーブがなく、まっすぐだと、負担が増えて、痛みが出てきます。(右の図)

 側弯症の治療をしないと、体型が歪んで美観が損なわれるだけでなく、背中や腰の痛み、疲労、神経系統のトラブル、そして心臓や肺のトラブルにつながる場合があります。

 

Q:なぜ側弯症になるのですか?

 側弯症を発症する原因はたくさんあり、100種類ほどもあるのではないかと言われています。生まれつきの「先天性」や、遺伝性疾患(マルファン症候群など)によるものなど、原因がわかっているものもあります。

 しかし側弯症全体の80%は、原因がわからないものです。 これ「特発性(とくはつせい)といいます。

 「特発性」とは、「原因がわからない」という意味です。

 側弯症の人は、親、兄弟姉妹にも側弯症の人がいることが少なくありません。これは、側弯症が遺伝するというよりは、「側弯症になりやすい体質」が遺伝するものと考えられています。親が近視だと、子供も近視になりやすいようなものだと言われています。

 (注:「突発性(とっぱつせい)」と混同する人がとても多いので、注意してください! 突発性とは、ある瞬間に突然なるものです。側弯症はある瞬間に突然なるわけではないので、突発性側弯症というのはありえません。) 

 (注:2013年現在、大学病院で、特発性側弯症の遺伝子研究が始まっています。)

 

正常な背骨を横から見た図

 

 これほど多くはありませんが、出生時にすでにあった脊椎の異常によるもの(先天性側弯症)、中枢神経系統の異常(脳性麻痺、など)によるもの、筋肉の病気(筋ジストロフィー、など)によるもの、結合組織の異常(マルファン症候群、など)によるもの、そして遺伝子異常によるもの(ダウン症候群)、などがあります。

  (補足:広い意味での側弯症には、「機能性(きのうせい)側弯症」というものも含まれます。これは、外見的には背骨が曲がっているように見えても、レントゲンで確認してみると異常がないものです。こうした側弯症は治療の必要はありません。 これに対して、経過観察や治療を必要とする側弯症を、「構築性(こうちくせい)側弯症」といいます。 

 (2つの側弯症は専門医がレントゲン写真を見れば、すぐに区別がつきます。一般に民間療法が「側弯症も治ります」とうたっているのは、機能性側弯症ではないかと思われます。 このサイトで対象にしているのは、もちろん構築性側弯症のほうです。)

 

Q:どういう人が側弯症と診断されるのですか?

 アメリカ国民の2〜3%、つまり約600万人が、何らかの形の側弯症ですが、治療を必要とするのは0.2%〜0.3%つまり約100万人です

 (補足:日本では、1973年、千葉大から発表された、1万6337名の小中学生を対象にした調査で、0.72%の発生率だということがわかりました。その後、 北海道大学、徳島大学、神戸大学で行われた同様の調査でも、ほぼ同じような結果が確認されました。)

 側弯症のなかで、もっとも多い特発性の場合、男子より女子のほうが発症が多く、治療を必要とする確率も女子は男子の5倍であり、さらにカーブが進行する確率も高いです。

 (補足:研究が進み、少しずつではありますが、原因がわかる側弯症が増えてきています。しかし今でも、大多数は原因不明のものです。)

 

Q:側弯症だとどのような外見になりますか?

 弯曲が大きい人は、いくつかの物理的な影響が出てくる可能性があります。

 足の長さが違ってくる可能性があります。これは本人にとっては、とくに物理的な障害とならず、他の人にはわからなくても、精神的にショックなことかもしれません。

 胸郭がだ円形になり、左右どちらかの肋骨が他方より目立つこともあります。 女子の場合、バストの形が左右で違って見えることもあります。 

 肋骨の間隔が不均等になると肺機能が影響を受ける場合があり、これによりスポーツをするのが難しくなるかもしれません。

 しかし、側弯症によって行動が大幅に制限されることはないでしょう。

 

Q:側弯症にはどんな種類がありますか?

 側弯症のカーブを言い表す方法はたくさんあります。 

 多くの場合、「重度の思春期特発性側弯症」といったように、いくつかの言葉を組み合わせて使われることが多いです。

 もっともよく使われる、4つのカテゴリーについて説明します。

 @カーブの位置による分類

 側弯症のカーブは、脊椎の特定の場所に現れることが多く、またとくにカーブが現れやすい部分もあります。

 カーブがどこにあるかによって、背中の見た目も異なり、また治療も微妙に異なってくる場合があります。

  (図の一番左)――特発性側弯症のなかでも、もっとも多いカーブ・パターンの1つ。右側にカーブしている場合が多く、肋骨のねじれが目立ちやすいので、見つけやすい。

  *胸腰椎型(左から2番目)――やはり特発性側弯症に多く見られるカーブ・パターン。カーブの長さが長くなる傾向がある。肋骨のねじれや肋骨の盛り上がりは胸椎カーブよりは目立たないが、それでもかなり目立つ。

  *腰椎(右から2番目)――背中の下のほうに現れ、左側にカーブしている場合が多い。カーブは目立ちにくいが、他の種類のカーブより柔軟性が少ない。

  ダブル型(一番右)――逆方向の2つのカーブがある、S字型カーブ。 2つのカーブが互いにバランスを取ろうとするため、一番目立ちにくく、痛みも出にくいとされる。一見すると、背骨が曲がっていないように、見える。

 

 A原因による分類

 原因によって分けるほうが、便利な場合もあります。

 特発性

  側弯症患者の約80%が「特発性側弯症」です。これは原因がわからない、という意味です。

 骨障害性(先天性)

  「骨障害性」とは「骨の異常から発生した」という意味です。この側弯症は通常、母親の胎内にいる時期に発生します。 

  この側弯症は、脊椎の形に影響を与えます。ほとんどの先天性側弯症のカーブは進行しませんが、中には治療を必要とするものもあります。

 *他の原因によるもの

  神経や筋肉の疾患(ポリオ、筋ジストロフィー、脳性麻痺)、結合組織の異常(マルファン症候群)、脊髄の腫瘍、交通事故などでの脊椎の損傷などによって引き起こされることもあります。

 Bカーブの度合いによる分類

 脊椎のカーブの度合いによって類別されることもあります。 カーブを測るのには「コブ(Cobb)」という方法が使用されます。 

 コブ法では、傾いた2つの脊椎から脊椎のカーブした部分に沿って線を引き、その2つの線が交わったところが、「コブ角」になります。

 ただし、2つの線が実際に交差する箇所は、レントゲン写真上からはるかはずれたところになります。そのため、幾何学上の法則を用い、

 最初の2つの線に対して垂直な線を引きます。治療に関する判断は、しばしばカーブの度合いに基づいてなされます。

  *10〜25度――→軽度の側弯症

  *25〜35度――→中度の側弯症

  *40度以上――→重度の側弯症

  *80度以上――→高度の側弯症

 

C発症年令による分類

 発症した年令で分ける場合もあります。

  乳幼児期側弯症――非常に少ない。だいたい3歳になる前に発症する。 男子に多い。治療せずとも自然に治るケースが多い。

  学童期側弯症――3〜10歳で発症する。 約60%は治療しないと進行する。 

  思春期側弯症――もっとも多い。思春期に発症する。 右胸椎カーブが多い。圧倒的に女子に多い。

  成人期側弯症――約86%は思春期から特発性側弯症だったのが、大人になるまで気づかなかったもの。 

  変性側弯症(老人性側弯症)――加齢によるもの。

側弯症をめぐるうわさの検証(○か×か)

 1.側弯症になったのは、カルシウム不足のせい?

 ×

 2.側弯症になったのは、姿勢が悪かったから? 

 ×

 3.側弯症になったのは、重いかばんを持ったから? 

 ×

 4.側弯症は思春期にはほとんど痛みがないが、成人期には痛む場合がある? 

 ○

 5.装具によって背骨はまっすぐにはならない? 

 ○

 6.喫煙は骨にとってよくない?  

 ○

 7.手術で体内に入れた金属棒が金属探知機に反応することはなく、また棒がさびることもない   (訳注:金属探知機の感度が非常に高い場合、まれに反応することがあるようです。また、再手術で取り出したら、金属棒がさびていたという人もいます。)

 ×

 8. 手術をしても、自然分娩で子供を産める?  

 ○

 9. 伝染する? 

 ×

 10.現時点では、防ぐ方法はない? 

 ○


2.診断方法

Diagnosis 

側弯症になるとき、ほとんどの子供は何の痛みも感じません。 

そのため定期的にチェックすることがとても大切です。 

 学校、家族、あるいは医師によって早期に発見されれば、

状況をコントロールし、他の問題を防ぐために治療することができます。

 大体9歳から骨の成長がほぼ終わるまで、6〜9ヶ月ごとに検査を受けるべきでしょう。 

 骨の成長が終わるのは、大体女子で16.5歳、男子で18歳です。 

 一般に、完全に成長が終わると進行はゆっくりになります。

ただし、進行が絶対に止まるという保証はありません。

 Q:側弯症かどうか、どうしたらわかりますか?

 1.家庭で

 側弯症になると、ズボンのたけや、スカートの裾のラインが左右で異なることがあります。 

 早期の徴候を見逃さないためには、背中をじっくり見ることが必要です。 親は、次の点をチェックしましょう。

  1. 左右の肩の高さは同じか?

  2.左右どちらかの肩甲骨が、他方より飛び出ていないか? 

  3.両腕をだらんとたらしたとき、左右どちらかの腕が一方より長くないか?

  4.背中が床と平行になるよう、子供を前かがみにさせる。背中の左右どちらかにふくらみがないか?

2.学校で

 アメリカでは、50州すべての州で側弯症のスクリーニング検査が義務付けられています。

 (補足:今では日本でも、「脊柱」が学校健診の項目に入っています。)

 

Q:側弯症らしいと思ったら、どうしたらいいですか?

 上記の徴候が複数見つかっても、すぐに側弯症だとは断言できません。 

 側弯症は診察やレントゲン写真によって確認すべきであり、通常脊椎の分野で特別の訓練を受けた整形外科医が行います

 カーブの程度を判断する上でもっとも広く使用されている方法は、子供の背中を撮影したレントゲン写真から計算される「コブ方式」です。

 前かがみになって肋骨のふくらみの高さを測定する、分度器のような「スコリオメーター」という器具を使う方法や、他の方法が使われたこともありました。 しかし、こうした技術のほとんどは、今ではあまり広く使われてはいません。 

 側弯症を治療するか/しないかの判断は、明らかにわん曲が進行している証拠が出たときになされるので、レントゲン写真を撮ったり、他の証拠をとることが必須になってきます。

 見極めるべき重要なポイントの1つは、カーブが進行性のものかどうか、ということです。 進行のリスクが、高くなる要因はいくつかあります。 

 

Q:進行性の思春期特発性側弯症になりやすいのは、どのような人ですか?

 進行のリスクは、主に2つの要因に基づいています。

 1つは、今後骨がどれだけ成長するか、つまり残っている成長の年数です。残っている成長の年数が多いほど、カーブが進行する確率が高くなります。

 もう1つは、診断時のカーブの程度です。 20度以上のカーブは、20度以下のカーブよりも、進行する可能性が高くなります。

 また初潮前の女子、そして一般的に男子より女子のほうが、進行の可能性が高い傾向があります。 

 

Q:専門医のところでは、どんなことをしますか?

 恐らく、最初に、背中を前と後ろから見て、首、ウェスト、肩、腰、胸、あるいは腕や体の長さが左右で違わないかどうか見るでしょう。 また両足の長さが同じかどうかも見るかもしれません。 そして「前かがみテスト」を行い、カーブの状況や肋骨が盛り上がっていないかを見るでしょう。 

 また、二分脊椎症(spina bifida)や神経線維腫症(neurofibromatosis)、といった、まれな原因による側弯症ではないかどうか確認するために、病変(lesions)などがないか、皮膚を見るかもしれません。

 進行のリスクは、あとどのくらい成長するか、ということと関係するので、骨の成長の度合いを知ることが重要になってきます。 実年令(あまり正確ではない)、初潮の有無、「リッサー・サイン(Risser sign)」、などで判断します。 「リッサー・サイン」では、腰骨のカルシウム沈着(calcification)量を測定します。 これは骨年令を推測する上で、有効な方法として広く使用されています。

 背中に痛みがある場合には、腫瘍、感染症、あるいは傷などが原因となっている場合もあります。 必要があれば、CT検査、MRI検査などが行われるでしょう。


3.側弯症の治療

Treatments of Scoliosis

 

 専門医によって側弯症と診断されると、次に治療法を選択することになります。

 治療法は主に、カーブの度合いと患者の年令に応じて選択されます

 ほとんどの人は全く治療を必要せず、必要とするのは定期検診だけです。 

 定期的に運動をし、理想的な体重を維持し、喫煙を避け、座っていることの多い生活スタイルを避けるよう、勧められるでしょう。 

 体重を減らし、定期的に運動すると、強固な背中を持ち、重い体重を背負って動きまわらなくてもよくなります。

 特発性側弯症は原因がわからないので、治療のほとんどは、脊椎のカーブの矯正を目標にします。

 科学的な方法による研究結果から、効果がある治療方法はわずかだ、ということがわかりました。 

科学的な研究は、非常に多くの人々を調べ、できるかぎりバイアス(偏重)やエラーをなくして行われます。

こうしたテストをパスした治療法だけが効果があると認められ、患者に勧められるのです。

 筋肉への電気刺激、体操プログラム、脊椎へのマニュピレーション(カイロプラクターが行う種類の手技)は、

それ自体が側弯症の治療に有効だとは証明されていません。 

 以下では、側弯症のカーブを防ぎ、矯正する上で、多くの専門医が有効と認めた治療法のみをとりあげます。

 @経過観察のみ(とくに治療はしない)

 子供と成人のほとんど(約95%)の側わんは、生涯低い角度のままであり、進行していないかどうか専門医にチェックしてもらうだけで済みます

 何もしないという決断、つまりカーブの進行をチェックするだけという決断は、患者の年令と、予想される結果によっては合理的な判断です。 

 カーブの程度が軽い(10〜25度)なら、女子は16.5歳、男子は18歳まで、6〜9ヶ月ごとにチェックを受けるべきでしょう。

 治療をしなかった患者を調査した研究によれば、思春期を過ぎている軽度の側弯症患者の多くは、何も治療をしなくても、カーブは進行しませんでした。 

 軽度の側弯症の中には、全く治療をしなくとも、自然と角度が低くなる場合も珍しくありません。

 成人の側弯症患者のほとんどは、思春期から側弯症だった人です。中〜軽度の人は3〜5年に1回くらい、重度(50度〜)の人は年に1〜2回くらいのペースで定期検査を受けたほうがよいと言われています。もしもカーブが進行しているとわかった場合には、なるべく早く治療を始めるべきです。

 成人の側弯症については、このページの「成人の側弯症」という項目で、より詳しく述べます。

 

Q:レントゲン写真の健康へのリスクはありませんか?

 今では、レントゲン写真を後ろから撮る、照射する面積をなるべく小さくする、生殖器の部分に特殊なエプロンをつける、などの方法で、浴びる放射線の量をできるかぎり少なくする方法が取られています。 

 気になる場合は、かかりつけのお医者さんに相談してみてください。

 

A装具療法

 装具は、カーブの進行を防ぐ上で効果があることが証明されています。

 皮膚、筋肉、肋骨に不均等な圧力をかけ、脊椎を少しまっすぐな位置へ押しやることにより、装具はカーブを緩やかにします。 

 一般に装具は1日23時間着け、スポーツや水泳などのときにははずします。 

 成長のペースが落ち、骨の成長が終わると、少しずつ装具を着ける時間を減らし、やがて治療は終了します。

 装具を着けている間は、カーブが矯正されているかどうか頻繁にチェックする必要があります。 

 装具を着けていてもカーブが全く矯正されていない場合には、装具を再調整するか、作りなおす必要があります。

 

Q:どれくらいの角度だと、装具が処方されるのですか?

 装具療法が適しているとされるのは、以下のいずれかに該当する場合です。 

  * 0〜30度の進行性のカーブ

  * 30〜50度のカーブ

 一般に20度以下のカーブは治療の必要はありません。 ただし例外もあり、また例外かどうかは多くの要因によって決まります。

 コブ角が40度〜45度を超えたカーブは、装具療法に対する体の反応が悪くなるので、手術で治療します。

 

Q:装具はどれほど効果がありますか?

 子供の場合、20〜40度の中程度のカーブは、治療前の角度の3分の1か、2分の1ほどになります。 

 重要なこととして、装具は思春期の成長期にカーブが進行することを防ぎ、手術を避ける可能性を生みます。 

 ほとんどのカーブは、最終的には装具を着ける前の角度と同じくらいにまで戻ってしまいますが、装具を着けていた人の約20%は、装具による矯正が生涯維持されるでしょう。 

 進行性の思春期特発性側弯症の人の中には、進行のペースを遅くするだけの効果しか得られなかったり、あるいは装具を着けていても進行してしまう人もいます。 こうした少数派の人(最近のある研究によれば、約10%)では、装具療法中、または装具療法終了後に、手術が必要な角度までカーブが進行します。

 成人の場合、カーブは長い年月をかけてゆっくりと進行します。しかし、大人では、装具はカーブの進行を防ぐ現実的な解決方法ではありません。 

 30度以下のカーブは通常、進行しません。 

 30〜60度のカーブは進行する場合もあれば、進行しない場合もあります。 60度以上の重度のカーブは多くの場合進行します。

Q:どのような装具を使うのですか?

ミルウォーキー装具

 ミルウォーキー装具は、側弯症のために初めて開発された現代の装具です。

 1945年にウィスコンシン医学校とミルウォーキー小児病院のウォルター・ブラント医師とアルバート・ステメッド医師により開発され、以後少しずつ改良され、1975年ごろに今のデザインになりました。 

 現在でも、とくに胸椎部の上方のカーブの治療に使用されています。

 腰骨の位置にプラスチック製のガードルが、首のところには首を囲むリングがあり、両者の間には胴体と同じ長さの金属棒があります。 

 ちょうどカーブがある場所に圧迫用のパッドがあり、金属棒についているストラップがこのパッドを支えます。 

 金属棒が体をまっすぐに保ち、首のリングは頭を骨盤と直線になる位置に保ち、パッドはカーブを圧迫します。 

 こうした機能すべてが、患者が成長している間、カーブの進行を防ぐため、体をまっすぐに維持するために作用します。

 古株の装具であるとはいえ、ミルウォーキー装具は今でも、上部胸椎のカーブの治療には最適の治療法とされています。

ボストン装具 (TLSO=胸椎腰椎仙骨装具)

 TLSO装具は種類がたくさんあり、それぞれ少しずつ構造が異なりますが、機能上の基本原則は同じです。

 「アンダー・アーム」(「わきの下」という意味)、あるいは「ロー・プロファイル(「目立たない」という意味)」装具とも呼ばれます。

 素材はプラスチックで、患者の体にぴったりフィットするように作ります。 

 TLSOの中でももっとも広く普及しているのが「ボストン装具」です。これは、1970年代はじめにボストン小児病院のジョン・ホール医師とウィリアム・ミラー医師が開発しました。

 ボストン装具は、前面は胸の下から骨盤のあたりまで、後ろは肩甲骨のすぐ下から太もものすぐ上まであり、胴体を押し、背中の下のほうを平らにするよう設計されています。

 カーブに圧迫を加えるため必要な部分にパッドをつけ、圧迫を加えるのと反対の側には、「逃げ」となる穴があります。

 胸椎の下のほうと腰椎部分全体のカーブのほとんどには、この装具が処方されます。

 

Q:装具は1日にどれくらいの時間、つけるべきですか?

 着用時間の長短による効果は、明らかではありません。

 しかし、全く着けなければ全く効果はありませんし、1日24時間着ければ効果が最大限になる、と推測されます。

 入浴などの時間を差し引いて、1日23時間と処方されるケースが一般的です。 

 

Q:装具療法が効果を挙げるためのポイントは?

  1.まだ成長段階にあるうちの、早期発見。

  2.側わんの程度が、25〜40度である。

  3.専門医のもとで定期的な検診を受ける。

  4.装具が体に合っている。

  5.患者が治療に前向きで、家族も協力的。

  6.今まで通りの生活を維持する。 スポーツやダンスなどをしている場合は、装具をはずす時間について、専門医の指示を仰ぐ。

 

Q:装具を着けることの副作用はありますか?

 装具療法には、いくつかの副作用があります。 常に装具によって体を圧迫するため、しばしば、あせもなどができます。 これはとりわけ気候が温暖な地域ではよく起こり、装具を調整したり、スキンケア方法を変えることによって対処できます。

 装具を着用することの最大の副作用は精神的なものと思われますが、これは測るのが困難です。 装具を着つける時期は、自己イメージや仲間との関係が大きな意味を持つ、多感な時期と重なります。

 ボストン装具はミルウォーキー装具より目立たないとはいえ、それでもかさばります。 

 装具をつけている女子はしばしば、洋服のことで悩みます。 ハグされたり、体にさわられたり、他の子供たちの前で着替えることも、複雑な問題になります。 

 精神的な不安には他に、装具が効果があるのかどうか、いつ装具から解放されるのか、また手術が必要になるのではないか、などがあります。

 定期検診は、重大な決断が下される転換点になることもあります。 新しい治療プランが示されるたびに、子供はそれに合わせて自分自身や自分の考えを変えなければなりません。 こうしたときに、周りの人が感情移入し、精神的なサポートを与えれば、子供は強く、早く立ち直り、良い自己イメージを形成することができるでしょう。(p. 57, Forstenzer and Roye, 1989)

 ある研究では、手術を受けた女子より、装具療法を行った女子のほうが、自らが直面している状況に対してより自分がコントロールできる部分が多いと感じている、としています。 装具療法では、毎日自分で自分の気持ちを治療に向けなければならないからかもしれません。 患者は、装具を着けるかどうか、毎日自分で決めなければならないからです。

 装具を着ける上で親の果たす役割については、このページの「側弯症の子供とその親たち」の項目で、

 装具を着ける女子の自己イメージと自尊心については「側弯症と自己イメージ」の項目で、より詳しく取り上げます。

 

装具への適用に関するアメリカの研究

 ミルウォーキー装具を着けている、14〜17歳の女子高校生16人への、インタビュー結果を以下に紹介します。(Gratz & Papalia-Finlay, 1984)

 いくつかの研究論文は、側弯症や装具療法が活動を制限するとしていますが、これは一般的なことではありません。 調査に参加した女子は、バスケット、水泳、陸上、テニス、スキー、ソフトボール、バレーボール、バンド、語学クラブ、演劇など多くの課外活動に参加していました。 ほとんどの少女が、スポーツをしている間は装具をはずしていました。

 装具のメリットとしては、姿勢が良くなる、外見が良くなるなどといったことが挙げられ、装具をつけるようになって良く眠れるようになったと述べた子も2人いました。

 もっとも大きな問題点は、装具のあご受けのせいで、下が見えないことでした。 また何人かは、装具は不快で活動が制限される、装具をつけているとバランスをとるのが難しいので、どうやって座るかを再度練習しなおさなければならないと語りました。 

 別の不便な点は、装具をつけていると車の運転ができないことです。 数人はお店で洋服を見つけるのが難しいと述べ、装具によって皮膚のトラブルが増えたと述べました。 

 ある少女は、どのくらいの時間装具をつけるか、また体操をするかについて、母親と大ゲンカをしたと言いました。 

 さらに、他の人から装具のことを聞かれたり、心無い態度を取られることが一番つらいことだと語った子もいました。

 装具をつけなければならないことを知ったとき、ほとんど全員が、「なぜ、自分がこんな目にあうのか」と思い、ショックを受け、落ちこみ、泣いたと述べました。 

 また全員が、3〜6週間ほどの「調整期間」の後、装具を受け入れられるようになったと語りました。 

 もしあなたが、装具を着けなければならないことがわかったばかりで、そのことでとても落ちこんでいるとしたら、そう思うのはあなただけではありません。 時間がたてば、きっと気持ちも落ち着くでしょう。

 他にも装具を着けている人を知っていると、比較的たやすく装具に適応できるようです。 

 もしあなたが他に装具を着けている人と話すことができるなら、大いに助けになるでしょう。 どう感じたか、どうやって適応したか、また適応するためのコツなどを聞けるかもしれません。

 6人の少女が、自分が精神的に独立し、たくましくなり、責任感が強くになったので、装具はいい経験だったと述べました。

 初めて装具をつけて学校に行く日は、全員が心配の種だったと語りましたが、友達が助けてくれたおかげで気持ちが軽くなったと語りました。

 

B手 術

Q:手術が勧められるのはどのような人ですか?

 装具をつけているにもかかわらず、カーブが急速に進行してしまった場合、次に検討する治療方法は手術です。

 10代、または10歳未満の子供の場合、手術は通常、カーブが40度以上のときに選択肢とされます。

 成人の場合、手術を選択する理由はそれほど明確ではありませんが、痛みなどの不快感の増大、カーブの進行、などがその理由になります。 

 多くの人が、カーブの進行に伴って、背中のこぶが大きくなったと述べています。 

 こうした人々にとっては、手術によって変形、不快感、痛みが軽減される場合があります。しかし、必ず保証されるわけではありません。

 

Q:どのようなとき、装具療法よりも手術がよいとされますか?

 ときに装具療法の成功率が極めて低く、身体的、精神的代償がそれに見合わないことがあります。 

 この決断は医師と患者本人(そしてときに患者の両親)によってくだされます。 

 何年も装具療法を行った後でも、カーブが大きいなら、手術が勧められる場合があります。

 

Q:手術の目的は何ですか?

 ほとんどの側弯症の手術の目的は2つです。 1つは、脊柱を強固に安定させることです。

 2つ目は、カーブを部分的に矯正する、つまりカーブを緩やかにすることです。 

Q:手術はどのように行うのですか?

 脊椎を矯正し、安定させる手術は、「脊柱融合術(spinal fusion surgery)」と呼ばれます。 

 執刀医が体の前か後ろ、どちらから背骨にアプローチするかによって、前方、あるいは後方手術があります。 

 手術では、背骨の1つ1つの骨がそのすぐ上と下の骨と融合されます。 典型的な手術では、10個、あるいはそれ以上の椎骨が融合されます。

 手術ではまず、背中にある筋肉を両側によけます。 

 その後、背骨の小さな関節の表面を取り除き、背骨を矯正しながら、金属製の器具をいくつか埋めこみます。

 その後、腰骨(または肋骨)からとった小さな骨の破片(ボーングラフト、bone graft)を、脊椎に沿って移植します。 これらの骨片が定着することによって脊椎は固定され、手術をした部分が1つの堅い骨のようにります。

 手術はカーブをした背骨の部分を融合させ、カーブが進行/悪化することを防ぎます。

 大抵は手術2、3日前に入院し、順調であれば20日ほどで退院します。

 移植した骨が定着するのに、10代で4ヶ月ほどかかります。大人はもう少し時間がかかります。

手術前

Q:手術は安全ですか?

 手術以外のすべての治療法が、手術を避けることを目標にしているとはいえ、側弯症の手術は今日では安全なものと見なされています。

 麻酔の向上、輸血方法の改善、手術技術の向上により、手術は以前より安全になりました。 

 背中に入れるインプラント器具が開発されるまでは、側弯症患者は手術後長期間(場合によっては何年も)、石膏づけで、寝ていなければなりませんでした。

 しかし現在では、多くの患者が手術数日後に歩き始め、脊柱を外から差さえるための軽い装具を着ければいいだけになりました。

 ここ数十年で側弯症の手術は大きく進歩し、安全で、術後も良好な経過が期待されるほどになりました。

 とはいえ、手術の長期的な影響については、さらなる調査が必要です。 

Q:手術の合併症にはどのようなものがありますか?

 脊柱融合手術の合併症率は0.1%〜1.0%で、ほとんどの合併症は一時的なものです。

 もっとも懸念されるものは、脊髄の損傷です。これを防ぐため、手術中は、脊髄に電流を流します。これによって、脊髄へのマイナス影響をすぐに察知し、ただちに対処することができます。

 その他のよく見られる術後の合併症には、感染症、埋めこんだインプラント器具の移動、移植したボーングラフトが定着しない、尿路の感染症などがあります。

 こうした合併症は健康な10代の若者では稀ですが、成人患者や、神経・筋肉原性側弯症の子供では頻度が高くなります。

 

 手術後

 

   

Q:手術による他のデメリットには何がありますか?

 他のデメリットには、経済的な負担、体の柔軟性が損なわれること、入院や回復期間中の生産性の損失などがあります。

 腰椎部分を固定すると、将来、腰痛になる可能性が高くなります。 

 脊椎の一部が動かなくなるため、体の柔軟性が失われます。どの程度失われるかは、固定する長さ、固定する部分によってそれぞれ異なります。

 術後の柔軟性は、下をどこまで固定するかによって、大きく影響されます。

 そのため、執刀医は固定部分を第3、または第4腰椎までにするよう、努力します。 

 残念ながら、カーブによっては、さらに下の部分まで固定することが必要になります。

アメリカの手術経験者からのアドバイス

 

 「私は17歳の時にハリントンとルーキー方式(補足)で手術をしました。 手術をする人に対しては、体力をつけておくこと、手術後積極的に物理療法を行い、前もってカウンセラーとメンタルな問題を解決しておく(必要なら心理療法を受ける)ことを勧めます。
  「きっと自分の生きようとする力、回復する力に力づけられるでしょう」

  (補足:ハリントン方式は、1940年代にアメリカのハリントン医師が開発した、側弯症手術方法。これによって側弯症の手術の安全性が高まり、矯正が可能になり、一気に普及しました。ルーキーはその後開発された、別の手術方法。ハリントン方式は1980年代までは一般的な手術方法でしたが、今では行われません。しかし非常に画期的な方法だったので、今でもこのコンセプトは残っています。このように側弯症の手術方法はたくさんあり、また側弯症治療の中でももっとも進歩著しい分野です。)

 「十分検討し、1人の医師の意見だけで決めないこと。自分が安心できる医師を選び、たくさん質問すること。年令にかかわらず、手術前には十分調べること

 「アドバイス:決断する前に複数の医師の意見を聞く。異なる手術方法について調べ、同じ医師の手術を受けた他の患者の話を聞く。さまざまな矯正方法について調べる。
  「入院中、あるいは退院後、自分を支えてくれる家族や友人によるサポート態勢をつくっておく。帰宅後のベッドについて、医師のアドバイスを求める。これは非常に助けになる。成人用の携帯トイレを用意しておく。これはとても助けになる。手術直後は座るのがとても大変だから。手術の1週間前は、消化系のトラブルを避けるため柔らかい食事や流動食にする。
  「医師に聞きたい質問すべてを書き出したリストを作成しておく。医師が答えてくれないようなら、別の医師を探す。 疑問がすべて解決されたと感じることは大切。
  「自分が感情面でどのようなことが必要になるかを知り、準備しておく。たとえば、病院でいつもだれかにそばにいてほしいのなら、他の人がいられるよう、個室を手配する。 手術後は自分では全く何もできないので、信頼できる人が側にいるのといないのとでは、大きな違いです」

 「私は医師を選ぶのに時間をかけ、完全に信頼できる医師を選びました。先生は私と夫の不安や恐怖を取り除くため、時間をとってくれました。
  「自分は一人になりたくないと思うだろうと思ったので、個室を手配しました。夫がいてくれたので、とても助かりました。トイレに行きたいとき、看護婦さんを待っていなくてもよかったからです。夫はいつもそばにいてくれました。私は身体的、精神的に夫を必要としましたし、そうなるだろうことはわかっていました。
  「手術はつらいですが、医療関係者が助けてくれるし、あなたもきっと乗り越えられるでしょう。
  「生涯にわたる痛みと不便さに比べれば、手術後の痛みは短いものです。 実際、私たちのほとんどは痛みや不便さを経験しているし、そうでなければ、どうして手術をしようなどと思ったでしょう? 
  「私の術後の経過は思ったよりよかったです。2インチ(注:約5センチ)背が高くなりました。 手術前、胸椎部分に小さなカーブが、腰椎部分に大きな80度のカーブがありましたが、20度になりました。肩の高さは左右同じになりましたた。生まれて初めて腰の高さが左右同じになりました。
  「手術前の痛みはなくなりましたた。術後の痛み(現在術後6ヶ月)も、ほとんどなくなってきました。今では、痛みというよりは不快感です。
  「筋肉はまだ術後の状態に適応しつつありますが、体力をつけるため泳いだり、歩いたりしています」

 


4.側弯症の子供とその親

Children with Scoliosis and their Parents

 

 思春期の少女たちが、医師から指示された治療を行う上で、親の姿勢は大きな影響を与えます。 

 子供は新しい状況にどのように対応したらいいかと考えるとき、一般的に自分の親を参考にします。 

 もし親が治療に対して積極的で前向きなら、子供も治療に対して前向きになり、医師の指示にも従うようになるでしょう。

 自分の娘が側弯症になったのは自分のせいだと罪悪感を感じる母親は、そうした気持ちを言葉ではなく、態度で子供に伝えてしまうことがしばしばあります。 

 子供は、「窮屈だし恥ずかしいから、装具はあまりつけなくてもいい」というメッセージを受けとってしまいます。 

 こうした言葉によらないコミュニケーションは、ときに「先生の言う通りにしなさい」と親が口で言う言葉と矛盾してしまうことがあります。

  子供が装具に慣れるのは大変だと感じている場合、こうした親の姿勢は、装具をつけなくてもいい、という裏づけになってしまう場合があります。

 多くの場合、装具に対する少女の姿勢は、親の装具に対する姿勢と同じです。 

 もしあなたの娘さんが装具をつけており、娘さんに装具をつけてほしいと思うのなら、装具をつけることに対して前向きになり、装具をつけるよう娘さんを促してください。

  母と娘

 側弯症の人は、身体的のみならず、精神的な苦痛も経験します。 身体的な状態により、自分は精神的にも欠陥があると考えてしまう場合があります。 

 身体的な疾患とつきあうのは大変なことですが、家族、友人、医師による支援のネットワークをもっていれば、少し容易になります。 

 思春期特発性側弯症は女性に多く、また体質は遺伝するため、母親と娘の関係に注目することは意味gああります。 

 母親は子供のことを気にかけ、子供と一心同体だと思いがちなので、若い頃に側弯症によって身体的、精神的にショックを受けた母親は、我が子が側弯症になったことによって、さらにショックをうけてしまう危険性があります。 

 母子で側弯症の場合、2つの点で、母親にとって精神的につらいものになります。

 1つには、自分が味わった気持ちと経験を再び思い出してしまうことです。

 もう1つは、娘に側弯症を「あげてしまった」ことについて罪悪感を感じ、自分は良い母親ではないと考えてしまう場合があることです。 

 ときには1つの家族の中で2人、あるいは3人の娘が側弯症になることがあります。子供の1人が側弯症と診断されたら、他の子供も診察をけ、レントゲン写真をとってもらうのがよいでょう。

 アメリカの側弯症メーリングリストへの投稿から 

 自分も側弯症のある母親は、娘2人が側弯症になり、自らの悲しみと落胆について書いています。

 「私はいい母親になろうとしてきました。でも、私には娘の側弯症をどうしようもありません。これは私の責任です」

 一方娘たちは、母親がこの状況についてどのように考えているのか、また母親の反応が自分の反応にも影響を与えることを理解しています。ある少女は次のように述べています。

 は私を見るたびに泣きます。母は、自分と同じものを私にもってほしくないのです」

 こうした状況では、娘は自分の側弯症と健全に向き合うことが難しくなります。自分が気落ちすることによって母親が苦しむと、娘は一人で自分の悩みに立ち向かい、さらに母親を慰めるという責任をも背負いこむことになります。

 母親と同じように側弯症になった少女は、自分と母親を重ねあわせるようになりますが、一方でしばしば怒りや恨みも感じます。「なぜ私がもらってしまったのだろう?私の代わりに、妹がもらえばよかったのに」。多くの場合、時間がたつにつれて恨みの気持ちはうすらいでいきます。なぜなら少女は親のサポートを必要としますし、また自分が母親の悲しみや失望の原因になっているのではないかと思うからです。ほとんどの子供たちが、「自分はいい親だ」と親が感じるようにしなければいけないという気持ちを持っているからです。ある少女はこう語りました。

 私の母も側弯症なので、母は側弯症のことをよく理解してくれます」

 「うちの親戚の女性は皆、側弯症です。側弯症によって、私は自分と家族とを重ね合わせることができます。共通点を見い出し、自分も家族の一員なのだと感じます」(Fostenzer & Roye, 1989) 

 置かれた状況に健全に適応する母親の姿は、子供が状況に適応する上での実際的な模範となります。娘と母親との間の相互作用は、娘がどのように治療を受けるか、さらに娘が治療をどれほど受け入れられるかに影響を与えます。

 自らも側弯症の母親は、娘の側弯症について何らかの決断を下すとき、自分自身の体験を参考にします。 2人の女性が、自分の側弯症に対する親の反応について書いています。 

 「母はどこへ行っても、私の側弯症のことを話題にしました。同情を引くためだったのかどうかはわかりません。でも私は、いつも母が同情を引きがっているような印象を受けました。私は母に、「私の病歴はプライベートなことなので他の人に話さないで」と頼みましたが、母は私の頼みを一度も聞いてくれませんでした。このような環境で成長するのは大変なことでした。なぜなら10代というのは、そもそもとてもプライベートなことの多い年代だからです。母の行為はしてはいけないことでしたし、この点で私は自分のことをコントロールする自由を奪われてしまいました。しかもこの頃、私は母と2人だけの家族でした」

 「私の母は側弯症について理解するように努め、私が経験することについて、とても悲しく思ってくれました。でも思春期の少女だった私は、母の気遣いをほとんど拒否し、母に頼ることを拒否しました。母が病院に来ると、私はよく母に、家に帰るようにと言いました。私は独立心を持つことが大切だと思っていましたし、また多分、少し母に頭にきていたからだと思います。(といっても、母には何の責任もないのですが。)また母は当時、一家の唯一の稼ぎ手として働いていた上、病院に来るのに2時間もかかったので、病院に来ることが母にとってとても負担だなことを私は知っていました。母ははじめ、一日おきに病院に来ると言いましたが、私は断りました。私は母の気持ちを傷つけたかもしれません。でも母も内心ほっとしたのではないかと思います」

 

 

側弯症に対する心理的な反応

 親は、子供が側弯症とその治療に対しての精神的な反応を「消化」していくのを助ける責任があります。

 側弯症と診断された少女は傷つき、自尊心をなくし、将来に不安を感じ、自分で自分の状況をどうにもできなくなるのではないかと不安に思っているかもしれません。

 もしあなたの娘さんが側弯症なら、こうした気持ちについて、娘さんと話し合ってみてください。

 子供が側弯症に適用する力は、周囲に理解し、支えてくれる大人がいるかどうかに大きく左右されます

 側弯症は慢性的な状態であるため、個人の自意識に長期的な影響を与えます。側弯症と診断された少女は、診断直後も、その後も、継続的に喪失感を味わい、その喪失感に対処していかなければなりません。そして自分自身についてのイメージの中に、側弯症というものを受け入れようと、苦悶するのです。

 側弯症との接し方に影響を与える環境的な要因が、いくつかあります。

 こうした要因には、少女が人間としてどれほど成熟しているか、新しい状況に適応できる性格かどうか、また家庭環境や、両親の反応などが含まれます。

 両親が前向きで、彼女の支えとなってくれれば、彼女は自分の状況を理解しやすくなり、また健全な方法で新しい状況に適応できるでしょう。

 両親は、自分の子供が「完全で」「健康な」子供ではなくなってしまったと考え、悲しくなったり、怒ったり、罪悪感を感じ、子供の支えになることが難しくなるかもしれません。

 親が落ちこんでしまって、あまり支えになれないと、子供は2つの新しい状況に適応しなければならなくなります。それは側弯症と、支えになってくれない両親とです。

 12歳から15歳までの側弯症の少女72人を対象にした調査から、次のようなことがわかりました。(Kahanovitz &Weiser、1989)

  母親が側弯症を前向きにとらえているほど、子供も前向きにとらえる。

  側弯症について母親と子供の双方が前向きに考えていると、子供にうつ状態、怒り、疲労、混乱が少ない。

  前向きな姿勢は、子供に高い自尊心を生み出す

 


5.成人の側弯症

Adult Scoliosis

 

 成人の側弯症とは、21歳以上で側弯症の人をさします。

 ほとんどの人は、ある日突然側弯症になるのではなく、思春期時代から特発性(=原因のわからない)側弯症をもっていた結果です。 

 また、外傷、骨折、骨粗しょう症、あるいは神経や筋肉の病気によって側弯症になる人もいます。

 

 Q:成人の側わんはどのように進行しますか?

 側弯症の成人のうち約30%の人は、カーブが進行するでしょう。 

しかし、大きく進行するのは、このうちのわずか10%の人です。

 「軽度の進行」とは、1年に1度くらいです。 「大きな進行」とは、1年に5度かそれ以上進行する場合です。 

 成人期にカーブが進行しやすい人は、

  カーブのバランスが悪い(胸椎、胸腰椎、腰椎カーブなどカーブが1つだけ)、筋力が弱い、

座りっぱなしの生活をしている、体重が多すぎる女性、などです。

Q:側わんが進行している徴候にはどのようなものがありますか?

 進行を示す要素はいくつかあります。 外観、痛み、肺機能の変化などがあります。 

 洋服のフィット感が以前とは違って、カーブの進行に気付く人もいます。 多くの女性が、ウェストラインや肩の変化を挙げます。 

 カーブが大きくなってバランスが変わり、体が傾いていると感じるようになった人もいます。 

 胸椎部分のカーブが進行した人の中で、65度以上になった人の中には、息切れや呼吸器系の風邪を頻繁にひくといった症状が指摘されています。

 痛みがほとんどない思春期側弯症と異なり、成人の側弯症の中でもっともよく聞かれる不満が、痛みです。 

 痛みが、本当に側わんと関係あるのかどうかを見極めることが大切です。 そして側弯症以外の痛みの原因を取り除くことが必要です。 

 痛みが側弯症と関係している場合、原因は筋肉、椎間板、神経の問題などかもしれません。 

 背中や腰の痛みがひどくなる場合、カーブが進行している場合もあります。 

 

Q:成人の側弯症にはどのような治療がありますか?

 成人の側弯症の治療はさまざまです。 ほとんどの人は手術をせずにすみます。 

 筋肉の疲労や「はり」は、アスピリンやイブプロフェン(タイレノール)などといった、非ステロイド系の抗炎薬(NSAIDsとも呼ばれる)によって和らげることができます。 こうした薬と、カーブ部分を固定する装具とをあわせれば、痛みをかなり抑えることができます。

 脊椎の痛みを訴える人には皆定期的に運動をし、理想的な体重をキープし、喫煙を避け、そして座りっぱなしの生活を避けるのがよいでしょう。 

 コブ角が50度以上ある人は、整形外科の脊椎外科の専門医と、手術について相談したいと思うかもしれません。

 若い患者に比べて、成人の手術は合併症のリスクが高くなるので、各人はリスクと、痛みとカーブの進行度とを十分比較検討して決断すべきです。 カーブの進行が明白になったら、できるだけ早く治療を始めたほうがいいでしょう。

 側弯症持ちの成人は、成長が終わった時点の角度が50度以上だった人は、1〜2年に1回くらい、30度未満だった人なら、とくに気になることがない限り、数年に1回くらい、検診を受けたほうがよいと言われています。

側弯症と性

 性的な面は、人間の健康の中でも、側弯症が影響を与えかねない側面の1つです。 

 脊椎のカーブと、それによってときどき引き起こされる痛みは、性的な活動を物理的に難しくする場合があります。 また手術により体の柔軟性が少し失われるので、性活動の内容などに慣れる必要があります。

 側弯症はまた、自分のボディー・イメージと自尊心(self esteem、セルフ・エスティーム)に影響を与える場合があります。 

 もし自分の外見を恥ずかしく思ったり、パートナーが自分の外見にショックをうけるのではないかと不安に思うと、リラックスして性的活動を楽しむことができなくなります。

 21歳から34歳までの女性46人を対象にした研究では、装具や手術によって側症の治療を受けた女性は、側症ではない女性と比較して、全体的な性的満足度が高いという結果が出ました。 

 また側症の女性は、そうでない女性より、親密度のキャパシティーが高いという結果も出ました。

 これにより、側症は必ずしも、性的活動を損ねるものではないといえます。(Clayson, Luz-Alterman, CatalettoとLevineによる研究、1987年)

 ある女性はこう書いています。

 「私は職場に親しい友人が数人います。彼女たちは私の最高のサポーターです。前回の手術の後には、電話をくれたり、訪ねてきてくれました。真の友人たちに、とても感謝しています。ある友人は、私が次に手術から退院するときには、私の自宅まで4時間の道のりを運転すると約束してくれました。これは真の友情です。一番助けにならなかったのは、私の外見や柔軟性の変化についての彼氏のコメントでした。(本人はそういうつもりはなかったようですが、でもずいぶん傷つきました。) 彼は支えになろうとしてくれ、次の手術のときにも来てくれると言っています。でも彼は、以前より動けなくなり、体重が増え、痛みが増し、以前できたことができなくなった私を受け入れるのが難しいようです」

 側症の女性は、自分の限界を知っていても、性的活動で満足したいと思うかもしれません。 

 そうした場合には、解剖学的、生理学的に体の限界について学ぶこと、またパートナーと話し合うことが助けになるでしょう。

 


 

6.側弯症と痛み

Scoliosis and Pain

Q:側弯症は痛みますか?

 痛みがある人も、ない人もいます。 

 脊椎の専門家であるウィンター医師は、思春期の間、側弯症による痛みが出るのは非常にまれだと言います。 

 思春期の患者は筋肉性の痛みを感じることがあります。 これは、カーブの一方の側の筋肉が、カーブをコントロールしようとして頑張ってしまうからです。 筋肉がオーバーワークになってしまって、痛むのです。

 しかし成人の場合には、問題はより複雑になります。 多くの人が背中や腰の痛みを訴えますが、そのほとんどは原因がわかりません。 

 多くの場合、成人の背中の痛みは、椎間板の老化や関節炎によって起こりれます。 

 そのため、側弯症が原因の痛みと、それ以外の原因による痛みとを識別するのは難しくなります

 

 側弯症による痛みと、通常の腰痛とを見分けるため、医師は患者の体を見たり、レントゲンを撮ったり、さらには脊髄造影、MRI、椎間板造影などの検査をするかもしれません。

 側弯症による痛みは、大人の場合、一般の人に比べて椎間板が早く老化するためではないかと考えられています。 これは、側弯症のカーブにより、脊椎に均等に重さがかからないことが原因です。 この種の痛みは通常、40歳以上の人に見られます。  

 なお、カーブの大きさと痛みとの間に相関関係は見られません。 つまり、カーブが大きければ必ずしも痛みが強いということはありません。

 「一般の人は側弯症を理解できません。大人になっても、周りの人は同情的ではありません。痛みなんて大したことではないと考える人が多いので、こちらが恥ずかしくなってしまうことさえあります。側弯症の人には想像できないのです。そして、“これは大変だ、つらかったでしょう”と言ってくれる医者に出会うまで、自分は大げさ過ぎるのだろうか…と悩みつづけるのです」 

 ある研究によれば、側弯症との診断後10年の間に、側弯症の人は、そうでない人に比べて、背中の痛みが多く、強く、また長期間続いたとの結果が出ました。 

 さらに側弯症の人は、日常活動において制限されることが多い、とする研究結果もあります。 

 別の研究は、特発性側弯症の人のうち23〜32%の人が痛みを経験したことがあるとしています。 

 さらに別の研究では、思春期特発性側弯症で手術をした人は、手術から9年後には、手術前より背中の痛みが強くなる場が多いとしているものもあります。

 

 Q:痛みには、どうしたらいいのでしょう?

 痛みに対処する方法はたくさんあります。 自分には何が効きそうか、かかりつけのお医者さんに相談してみてください。

@薬

 アスピリン、イブプロフェン(タイレノール)、ナトリウム、アセトアミノフェン(小児用アスピリン)といった薬局で買える鎮痛剤を使うことができます。 

 これらの薬は比較的安全ですが、胃部の不快感などといった副作用を伴う場合があり、また大量に服用したり、長期間服用することによって合併症を引き起こす場合もあります。 

 服用する際には、医師や薬剤師の指示にしたがいましょう。 また、服用する量や回数を増やす前に、医師や薬剤師に相談しましょう。

 医師から、非ステロイド系の抗炎症剤(NSAID)を勧められるかもしれません。 NSAIDは、痛みと炎症の両方に作用します。アスピリンはNSAIDです。 

 また痛む部分にすりこむと、痛みが和らぐ塗り薬もたくさんあります。

 恒常的に痛みがあると、抑うつ状態になりやすくなります。 抗うつ剤に関する研究は、抗うつ剤を投与することによって、抑うつ状態が改善されるだけでなく、痛みも和らぐと指摘しています。

 場合によっては、神経ブロックを行うこともあります。 これは、痛い神経の周辺組織に、痛みを和らげる局所麻酔薬を注入する方法です。 これにより、神経とその周辺部分を麻痺させ、痛みが和らぎます。 効果は、使用した薬の種類や人によって異なりますが、数時間から、数ヶ月持続します。

A手術 

 痛みが側弯症によるものだとわかったなら、痛みを和らげるのに役立ちそうな手術がいくつかあります。 

 ただし、その前に正確に診断することが必須条件です。 

B運動 

 多くの人が、体操や運動によって痛みが和らいだと言っています

 多くの場合、背中にかかるストレスを減らすことによって、痛みを和らげることができます。 膝腱(hamstrings)、大腿四頭筋(quadriceps)、腰の屈筋(hip flexor)などのストレッチを毎日することによって、腰の柔軟性を高めるとよいでしょう。 

 背筋力をつけることも、痛みを和らげ、日常活動の範囲を広げるのに役立ちます。 

 週に何回か、自宅やスポーツクラブで、筋力トレーニングをすることによって背筋力をつけることができます。

 痛みを和らげるためにトレーニングをするときは、関節に衝撃を与えるようなものは避け、水泳やマシントレーニングなどといった、衝撃の少ない運動を選ぶよう、医師は勧めています。

C他の補助的な療法

 背中の痛みを和らげる効果がある他の療法としては、瞑想、リラクゼーション・トレーニング、心理療法、指圧、鍼などがあります。

 鍼は病気をなおしたり、痛みを和らげるために、体の特定の場所に鍼をうつ、古代中国の療法です。 

 指圧は痛い部分を指で直接押す療法です。 これらの技能は、資格をもった施術士から訓練を受ければ、自分で習得することもできます。

 こうした療法は背中や腰の痛みに効くという調査結果が出てはいますが、調査のすべてが、きちんと行われたわけではありません。また、治療法の中には、効果があるという結果と、ないという結果の両方があるものもあります。

 さらに、こうした調査は、一般的な、あるいは慢性的な背中や腰の痛みについて行われたものであって、側弯症による背中や腰の痛みに限定して行われたわけではありません。 

 したがってこうした療法が側弯症による痛みにどれだけ効果があるのかは、まだ明らかではありません。

 一部の医師や側弯症患者は、以下のような療法を勧めています。

 1.温熱/冷熱
 熱い/冷たいシャワー、温/冷湿布、熱/冷タオルなどの方法で可能。温める/冷やす時間は、15〜20分。機械で温める/冷やす場合には、肌に直接あたらないよう、間にタオルなどを挟む。

 2.マッサージ
 マッサージ療法には、指先で軽く、ゆっくりと円を描くようなものや、体の中心から手足の指に向けた力強く、こねるようなものなどがあります。

 3.リラクゼーション
 リラックスする方法を習得するには練習を積まなければなりませんが、リラクゼーションの訓練をすることにより、痛みから注意をそらし、筋肉をリラックスさせ、それによって痛みが和らいだという人もいます。

 4.イメージ・トレーニングやディストラクション
 イメージ・トレーニングには、痛みを和らげるために、頭の中で心地よいイメージを場面や風景をイメージしたり、前向きな言葉を繰り返すことなどがあります。

 ディストラクション術は自分の注意力をネガティブな痛みのイメージからそらし、もっとポジティブなイメージに向ける技術です。このテクニックには、テレビやお気に入りの映画を見たり、本を読んだり、音楽を聴いたり、友達と会話することなどが含まれます。

 5.個人あるいは家族でセラピーを受ける
 心理療法士や精神科医、あるいはソーシャル・ワーカーが、慢性的な痛みにしばしば伴う、抑うつ、苛立ち、怒りといった気持ちに対処する上で助けてくれるかもしれません。

 6.理学療法を受ける
 整形外科を通して、専門の理学療法士に運動メニューを作成してもらうこともできます。

 7.コルセットをつける
 市販のものがありますが、病院によっては、成人用にコルセットを処方してくれるところもあります。着ける場合は、筋力が落ちないよう、運動や筋トレを心がけることが必要です。

 8.ペイン・マネジメント(pain management)
 ペイン・マネジメント・プログラムは、慢性的な痛みに苦しむ人のために、病院や医療施設が行っているプログラムで、患者の教育、対処方法のトレーニング、生活活動の管理、理学療法、そして必要な場合には適切な医学相談などが含まれます。 

 こうした専門クリニックを訪ね、相談することもできるでしょう。

D治療を組み合わせる

 以上の治療法やヒントが、すべての人に効果があるわけではありません。

 ほとんどの人は、医師のアドバイスや試行錯誤を通して、自分に効果がある方法を見つけていきます。また、複数の対処療法を組みあわせることもできます。

 (補足:カイロプラクティック療法などについては、十分注意してください。厚生労働省が平成3年6月に出した通達の中で、カイロプラクティック療法によって症状が悪化する可能性がある禁忌対象疾患として、側彎症が挙げられています。→「医業類似行為に対する取扱について」http://www.jac-chiro.org/G_B002b.htm

 

ある女性は次のように書いています。

 「私はNSAIDs、鎮静剤、瞑想、音楽によるリラクゼーション、ヴィジュアライゼーション、腰椎部分用のコルセット、腰椎部分用のシート・クッション、理学療法、マッサージ、ヨガ、3ヶ月間の神経ブロック、椎間板切開術(diskectomy)やアクアセラピーを試してみました。鎮静剤を使うのは、どうしても必要なときだけです。1週間に1回くらいです。常に痛みがありましたが、体に合ったコルセットをしていれば、オフィスで正社員として働くことができました」

 「私が勧めるのは、休養、音楽によるリラクゼーション、ヴィジュアライゼーション、そして何より、温水プールでのアクアセラピーです。プールでは重力がかからないからです。体の動きは滑らかになります。背骨に圧力がかかりません」

 


7.側弯症と自己イメージ

Scoliosis and Self Image

 思春期は11歳から18歳くらいまで続く、発達の時期です。思春期には身体的、性的、精神的な発達をします。大人の体格に近くなり、陰毛やわき毛などといった性的な特徴が現れてきます。女の子は胸が発達し、腰の部分が大きくなります。

 思春期は、「自己イメージ」と「自尊心」が発達する上で、非常に影響を受けやすい時期でもあります。

 「自己イメージ」とは、人が自分自身のことをどのように見ているか、ということです。私はどんな風に見えるのだろう? 私はどんな人間なのだろう? 私にとって大切なことは何だろう?

 「自尊心(セルフ・エスティーム)とは、人が自分自身についてどのように判断するか、ということです。私はいろいろなことをやり遂げられるだろうか? 私は自分について、満足しているだろうか?

 こうした質問は、とりわけ思春期の少年少女にとって重要なものです。自分を、個人として認識し始めているからです。

 大人になりつつある少女たちは、明確なボディー・イメージに加え、自分のアイデンティティーをも形成していきます。

 そしてセクシュアリティーや親密な関係というものについて考え始め、親や家族から自分を切り離して考えるようになっていきます。

 側弯症と診断されたティーンエージャーの少女は、外見や自分の体のことを気にしはじめる年頃に、重大な身体的問題に対処しなければならなくなります。

 少年少女はまた、同年代の仲間と自分とを比べて、類似点や相違点を見出そうとします。 友達同士で観察しあい、何が普通かを考え、その普通という枠の中に自分を当てはめようとします。

 同時に、自分の個性というものを求めます。普通になることと、個性を発揮することは両立が難しいことです。

 この年ごろの少女は、自分の体重、スタイル、髪の毛、肌、外見について非常に気にし、多大なエネルギーを注ぎ、多くの場合、とても自意識過剰です。

 少年少女たちは自分で自分をチェックすることに加え、仲間からもチェックされます。

 「高校生だった私は、学校でクラスメートから“皆と同じであること”という大きなプレッシャーを受けていました。思春期のくだらないことにかかわり合いたくなかった私は、手術のために高校3年生のほとんどの間、学校に行けないことを知ったときも、それほど残念だとは思いませんでした。

 「手術後の長い回復期のときも、友達に「遊びにきてほしい」とは言いませんでした。それでも、友達たちはときどきうちに来てくれました(多分1ヶ月に1回くらい)。来てほしくなかった理由の1つは、私はだれか人が来るときでも寝具をかけていなかったし、寝返を打つときにコルセットが寝具をひっぱってしまうので、寝具をきちんとしておくのがとても大変だったからでした。でも母は、友達が来た時、私に“見栄え良く”してほしがりました!私は基本的には、友達に側弯症のことは絶対に話しませんでした。側弯症は私にとって、元気になり、忘れられるようになるまで、耐えなければならないことでした」

 こうした心配やプレッシャーは、思春期の子供にとっては非常に大きなものになる場合があります。

 もし支えとなってくれる友人や家族、教師など他の大人が周囲にいて、この大変な時期に子供たちが感じることについて話すよう助けてくれれば、彼らの気持ちも軽くなるでしょう。

 直面している状況を受け入れ、認めてくれる親を持つ子は、批判ばかりしている親を持つ子より、前向きな自尊心を育むことができます。

 

Q:側弯症の女子にとって、ポジティブな自尊心はなぜ重要なのですか?

 12〜13歳の中学生3万6706人(そのうち685人が側弯症)を対象にした調査では、思春期に側弯症になると、自殺願望、飲酒、体の発達についての不安といったリスクをもたらすことが分かりました。(Payne, Ogilvie, Resnick, Kane, Transfeldt, and Blum, 1997)

 側弯症は少女たちにリスクをもたらしますが、前向きな自尊心はそのリスクを低くします。

 強い自己イメージをもった少女は感情の基盤がしっかりしています。そして、頻繁に行かなければならない検診、装具、自分は同年代の普通の少女と変わらないと思いたいという葛藤など、生活の新たな側面に、よりうまく適応することができます。

 

女性として経験する側弯症 

 アメリカの側弯症メーリングリストに、女性を対象にした次の質問が投稿されました。

 「Q:女性であることは、側弯症に対処するのを容易にしましたか、それとも難しくしましたか?」

 「私は容易になったと思います。なぜなら私は強くあることを期待されていないからです。たとえば重いものを持てないといえば、自動的に手伝うことを期待されなくなります。他の人も物理的な作業で私を助けやすいと思います。
 「ただ私は独立心が強いので、人に頼るのはとても嫌いなのですが。男性だったら、もっと大変だっただろうと思います。
 「それから医学的治療を受ける上でも、容易だと思います。治療を受けるのが簡単だというわけではありませんが、でも男性だったら、もっと大変だったろうと思います」

 「側弯症についての研究が少ないのは、側弯症が主に“女性の病気”と見られていることと関係があるかどうか?という質問についての私の意見です。
 「答えは、“はい”です。私は大いに関係があると思っています」

 「医者によると思います。男性の医師は、患者は平均的なビジネスマンより知識がないと思っています。
 「このメーリングリストに参加したおかげで、私はいろいろなことについて自分なりの意見を持てるようになり、長い目で見ると、とても知識が増えたと思います!」

 「私は3年以上前から、立っていたり、歩くのがつらくなり、“女性であること”のデメリットを感じています。
 「腰にコルセットをしている上、体重が増えたために、体にフィットした洋服が着られなくなりました。“セクシー”な歩き方ができなくなりました。10分以上立っていることができません。そのため楽しんだり、騒いだりするパーティーや集まりに参加できなくなりました 。
 「以前は運動していたおかげで実年令より若く見られ、体もスリムだったのに、運動ができなくなってから、20ポンド(約10キロ)も体重が増えました」

 「これは答えるのが難しい質問です。女性にとってルックスは大切ですし、体の変形として現れる病気に対処するのは、とてもつらいことです。
 「幸運なことに思春期の頃、私の側弯症はそれほどひどくありませんでした。私は片方の腰骨の位置のほうが高いなぁとは思っていましたが、自分の側弯症に気付きませんでした。
 「でも、できるかぎり美しく見えなければならないというプレッシャーは感じますし、カーブが進行にするにつれ、だんだんそうしたプレッシャーに対処するのが大変になってきます。
 「そしてある時点で、痛みが大きな悩みになります。痛みさえとれれば…と思うようになります。
 「私は、現代社会の女性は、男性よりも人生の変化に対して、よりオープンに対処しなければならないと思います。生理が始まり、やがて更年期がきます。どちらも、目に見える形での身体的な変化であり、自分の人生が変化していることを意味します。
 「男性にとっての人生の変化も大変なことだとは思いますが、女性はとても目に見える形での身体的変化によって節目がつけられます。
 「女性は、毎年何百万ドルというお金を化粧品につぎこみます。ファッション業界は女性を中心にまわっています。私は、女性は男性より“美しくなければ”というプレッシャーが大きいと思います。男性は外見をよくしたいとは思わない、という意味ではありませんが。
 「女性であることで、側弯症に対処しやすくなったかどうかは、わかりません」

 


このページの内容の無断転載を禁じます。

HOME